香川(高松),JAPAN day3

香川最終日の朝、私は平和すぎるドトールでコーヒーを啜っていた。今日は何をしようか考えながら、窓の外を見やる。もう止むことが無いように思われたあの二日間の土砂降りはどこへやら、3日目はどこまでも青い空が続いていた。雨が降るとどうも気持ちが塞ぎがちだったが、こうも暖かく春の陽気を感じると、元来の楽観的な私が蘇ってくるような実感があった。

 
軽い足取りでフェリー乗り場へ向かう。小豆島までの切符を買っていると、乗り場のお姉さんに”今ならまだ間に合います!急いで!”と急かされた。訳がわからないまま言われた通りフェリーに近づくと、チケットもぎの警備員さんに”早く!!”と背中を押されフェリーに飛び乗る。すぐさまモーター音がし機体が揺れだした。焦って展望室まで階段を駆け上がると、さっきまでいたチケット売り場がみるみる小さくなっていく。チケットもぎの警備員さんは笑顔で手を振っていた。あまりにびっくりしたけど、なんだか映画の主人公になったみたい!
 

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私は生まれも育ちも静岡なので、海といえば太平洋の深いコバルトブルー。海の向こうはただ水平線が見えるのが私にとって”普通の海”だった。
 
だけど、瀬戸内海はどうだろう。海は水墨画のような淡い紺。海の向こうには数々の島が無数に見える。海のすぐ向こうに島!変な気持ちだった。日本昔話とか、日本神話みたいな、すこし神々しさすら感じる。金毘羅さんの頂上でも思った”遠くまで来てしまったなぁ…”というワクワクと切なさがないまぜになったような気持ちが胸をよぎる。
 
離れ行く四国を見ていたら、妙な山を発見する。スパーンと頭を切り落とされたような変な形。あ!これが屋島か!昨日街を歩いていたらおじいさんにおせんべいをお接待で頂いたのだけど、その時”屋島には行った?”と聞かれたんだった。その名の通り屋根みたいな妙な形。栗林公園からとんがり帽子みたいな山を見たのもビックリしたけど、この屋島はもっと変な形だなぁ。
 

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”すごい山ですよね、あれ”
パッと横を見ると、上品そうな50代くらいの女性に話しかけられた。旦那さんと小旅行に来ているらしい。旦那さんはせわしなく展望室を子供のように走り回っては、小さなデジカメで景色を収めていた。旦那さんからデジカメを託され、2人の写真を撮る。二人ともとてもいい笑顔で、胸がじんわり暖かくなった。
 
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▲ご夫妻がとってくれた私と屋島
 
小豆島に到着すると、時間の流れ方が本土よりさらにスローなのを実感する。ぼおっとバス停でバスを待っていると、24の瞳の銅像があり、ここが舞台なことを知る。私はいま浜松に住んでいるのだけど、散歩コースに”木下恵介(日本映画の監督で、代表作が24の瞳)記念館”があり、よく中に入って休んでは24の瞳のポスターを眺めていたので意外な共通点にビックリ!
 
20分ほどバスに乗り、オリーブ公園へ。ちょっとビックリするくらい急勾配の坂を登る最中、周囲にはオリーブの木だらけに!淡くて、すべすべしたような木肌のオリーブの木はとても美しい。いつか庭を持つことができたら、ぜひ植えたいなと思った。
 

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平日ということもあり、園内には人がまばら。ゆっくりと回れてよかった。映画版”魔女の宅急便”のロケ地だったこともあって、まるで外国のお庭のような景色が続く。柔らかな海風に、美しい花々がなびいていた。有名な風車の横に腰を下ろすと、目下いっぱいに瀬戸内海が飛び込んでくる。あぁ、やはり瀬戸内海は本当に素晴らしい。なぜか日本の起原を感じるような、神々しさ。いつまでも、いつまでも見ていられるような気がする。
 

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オリーブ園を出たら、しばらく港までゆっくり歩いてみた。海沿いなのに風は柔らかく、すれ違う人は皆挨拶をしてくれる。すると、今朝フェリーの屋上で出会ったご夫妻とすれ違う。いいお天気ですね〜と言葉を交わし手を振って別れた。一人旅だけど、今回は本当に色々な人とお話ができて嬉しいな。
 

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ゆっくりと散歩をしていたら、17時過ぎになっていた。ちょうどいい時間のフェリーに乗れ、窓際の席でゆっくりと読みかけの新書を読む。あたたかな西日が優しく差し込む窓辺で、わたしはついうたた寝をしてしまった。とても気持ちはリラックスしていた。頭を預けた窓から伝わるわずかなエンジンによる震えが、かえって心地よかった。
 

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高松にもどり、地元のレストランでタコライスをいただきながら、この旅を思い返していた。急な思い立ちと衝動で、はるばる四国まで来てみたけど、この土地の人々はそんな行き当たりばったりの旅行者にとても優しく、あたたかなお接待を数え切れないほどしてくれた。お寺に向かい手を合わせ、自分を顧みながら弘法大師とのお遍路をし、何が自分にとって大事なのか、どうこれから生きていこうか考えることは、今の自分にはとてもとても大事な愛おしい時間だった。今回はたったの3箇所しか回れなかったけど、生涯かけて全て回りたいなと思った。
 
帰りの夜行バスは、”絶対瀬戸大橋渡る時を見よう!”と息巻いていたのにも関わらず、座った瞬間爆睡してしまい、気がついたら浜松だった。自分の神経の図太さには感服すら覚える。出発する時の不安げな顔の私はもういない。晴れやかな顔で、あと数日過ごす小さなアパートへと帰った。香川で経験したすばらしい体験は、私の心に大きな進歩をもたらしてくれた。